サロンな彼奴

katakoi20082008-05-03


霧雨のなか、今日は神奈川近代文学館で行われている「生誕80年 澁澤龍彦回顧展」に出かけた。


展示も素晴らしかったし、詩人高橋睦郎と澁澤龍子夫人の記念対談も面白かった。
(もっとも満員でモニター席でしか観られなかったが。)


今回の展覧会で澁澤が友人をすごく大事にする「サロン」であったことがよくわかった。
(澁澤は「忙しいから」と来客を断るのが自分でも嫌いだったらしい。)


彼はイメージとは裏腹に、生来、明るい性格で、人との交流を通してものを考え、執筆を続けていたようだ。
それは高橋睦郎が「澁澤さんはいったいいつ仕事をしていたのか」と奥さんに質問していたほどだった。
(奥さんの話によると、澁澤は40時間ぐらいぶっ続けで書き、そのあと20時間ぐらい寝て、朝も昼も夜もない生活だったらしい。午前3時に晩ご飯というか、3回目の食事をすることもあったそうだ。)


澁澤というと、サド裁判が有名だけど、彼は世間が正義とか善しか見なくなっていく時代のなかで、作家として積極的に悪を引き受けようとしていたのだと思う。
結局、彼はどこまでもサービス精神旺盛なホストだったんだね。


気がついたら、あっという間に閉館時間が迫っていて、結局、まる半日文学館にいた。
帰り際、文学館のある港の見える丘公園には、いつのまにか青空が広がっていた。