幸せな覗き見

katakoi20082008-12-27



今日は用事のあったついでに千葉市美術館で開催されていた「雪舟水墨画」展を覗いてみた。
年末ということもあってか、お客さんがほとんどいなく、おかげでゆっくり鑑賞することができた。


鳥が飛び、水草が生え、花が咲き、川が流れ、山が烟るモノトーンの世界――。
水墨画」は馴染みがないと、なかなかスウッと入っていけないが、さすがに雪舟は群を抜いた力量を感じさせるものがあった。
日本画家の横山操は「もう一度、雪舟から等伯への道程をたどってみたかった」と加山又造に告げて死んでいったそうだが、たしかに雪舟の水墨にはそれまでの時代とは違う、転換した何かがそのまま滲んでいるような趣を感じる。


私はミュージアムショップで買い物をするのが好きなのだが、今日も別冊太陽の「水墨画」特集を買ったので、雪舟をはじめ日本の水墨画の変遷をこれから少しずつ勉強してみようと思う。
今日の展覧会のなかでは雪舟のほかには剣豪として知られる宮本武蔵の可愛らしい茄子の画に妙に心が動いた。


同時に開催されていた「カラーズ・色彩のよろこび」展の方は、「水墨画」とは真逆の趣向で、これはこれで結構楽しむことができた。
私の好きな恩地孝四郎の木版多色摺が生で見られたのは幸運だったし、おどろおどろしい錦絵で知られる月岡芳年の“黒”の深みには引き込まれるような魅力を感じた。


今回の展覧会を廻っていて、はじめて自分でも気づいたのだが、私はどうも大きな絵や屏風よりもこぢんまりとした、覗き込むようなサイズの絵が好きらしい。引きで観るよりも近づきたいのだ。
このことは単なる美的感覚にとどまらず、思考傾向としても意外に重要な意味を持っているような気がするが、それを今はうまく説明できそうにない。いつかじっくり考えてみたいと思う。


ところで、わが勤務校はなんと昨日までめいっぱい授業があるという血迷った、阿呆なスケジュールを組んでいたので、今日はようやくにゆっくりと過ごすことのできた一日だった。
私はやっぱり美術館を訪れている時が一番幸せだ。(みなさんは何をしている時が一番幸せですか?)


今年も残りあとわずか。悔いのないように一年を締めくくりたい。
最近、肝心の「虫虫」ができていないので、大掃除をしながら、読書の方ももうひと頑張りしてみようと思っている。それでは。